始めたけどどうすればいいか分からない人へ!
資産運用の次のステップ

INTERVIEW

資産運用を始めるきっかけは人によってさまざまですが、実際に資産運用を始めてみると、市場環境によっては自分が思っている以上に大きく変動するタイミングなどもあり、中には『このままでいいのか』と不安を感じられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
資産運用を継続するためポイントについて、金融教育家である塚本俊太郎氏にお話を伺いました。

インタビューした専門家

金融教育家塚本 俊太郎
つかもと しゅんたろう

01

投資額を増やすタイミング

―まずは少額からつみたてNISAなどで運用を始められる方も多いですよね。そういった方から投資額を増やすタイミングを迷われているというお話を聞く機会が多いのですが、タイミングの考え方についてどうお考えですか?

投資額を増やしていくという話で言うと、市場の動向で投資額を増減させることをしないというのが大事です。あくまで、『今、手元に余裕資金があるからその分増やしていく』という風に考える。市場の動きとは関係なく決めていくべきだと思います。

―どうしてもなるべくいいタイミングで増額したいと考えてしまいますが、長期の目線で考えると、市場の動きで投資タイミングを考えるより、手元に資金があるタイミングが投資のタイミングということですね。
では、資産運用を始めてみたけど、その後運用が思わしくない場合はどうでしょうか?

長期投資が重要だという理由は、投資は『安く買って、高く売る』じゃなくて、買って持ち続けることで増えていくという考えのもとに行っているからです。だから、高いところで『早く売らなきゃ』と思う必要がないんです。例えば、下がっているとしても、長期投資に合った投資信託を持っているのであれば、そのまま持ち続けていくというのが大事。
『他のファンドに乗り換えなきゃいけない』というようなことを考える必要もないですし、淡々と相場が回復していくのを待てばいいと思います。

―前回、お話を伺った際におっしゃっていた、つみたてNISAに選ばれているような銘柄など、低コストの株式のインデックスファンドのようなものであれば、長期投資に向いているため淡々と相場が回復していくのを待てばいいということですね。

02

『テーマ型ファンド』や『アクティブファンド』の考え方

―ではテーマ型のファンドや、アクティブファンドについてはどうお考えですか?

私自身は、あまりアクティブファンドを推奨していません。その理由はアクティブファンドには『良いファンドがない』からではなく、『良いファンドを選ぶことが難しい』からです。
『良いファンド』というのは、相場の良いときも悪いときも自分たちの投資哲学を持ちつづけて、それに沿った投資行動をちゃんと行っている。なおかつ運用体制って人が重要なので、経験のある人たちがきちんとリサーチを行っていて、その体制を維持できているかを見なきゃいけないんです。
それができているアクティブファンドであれば、例えば1,2年パフォーマンスが悪くても、5年、10年と結果が出ているのであれば、短期的に乗り換える必要はないと思います。ただ、アクティブファンドはそういう体制を含めて見ていかなきゃいけないので、それを個人で選ぶのは難しいんじゃないかと思います。
それだったら、そういうこと考えなくてもいいインデックスファンドの方が簡単でいいんじゃないかと思います。
アクティブファンドは、基本的にはいい会社を選んで投資しているっていうタイプが多いと思うんですが、企業業績と関係のないニュースで市場が動いている時は基本勝てない。企業業績に目が向くような市場の動向が戻ってくれば、ちゃんと報われる形にはなるので、適切な運用体制をとっているということが前提にはなりますが、アクティブファンドに関しても短期目線で見るべきではないと思います。

―やはり長期運用に合った商品を選んで、淡々と投資を続けることが大切なんですね。

03

運用が思わしくない場合

―以前から保有しているファンドがずっと含み損が出ている場合はどうでしょう?

含み損になっているということは、あくまで過去の実績なんです。だから、利益が出るまで待とうっていう風に考える必要は実はなくて、運用自体が良くないということであれば下がっていても売るべきだと思います。
過去の実績と将来の予想は基本的にはリンクしていないので、運用自体が良くないものであれば『損をしているものを持ち続けていればいつかプラスになる』というのは難しい。だから、過去は過去として、『それはしょうがない』という判断をした方がいいこともあると思いますし、より高い期待が持てるものに投資し直した方がいいケースもあります。

例えば、アクティブファンドで、昔はすごく良かったんだけど、最近はパフォーマンスが良くなくて、運用体制も良くないようなものであれば、持ち続けても意味がないので、たとえ含み損であったとしても解約して、低コストのインデックスファンドに乗り換えることも検討したほうがいいと思います。
皆さん、『損をしているときに売りたくない』と言われるんですが、過去の状況はあくまでも過去の状況で、今の基準価額はその過去の状況を反映しているものなので、それが悪いものであれば、必ずしも将来、元の水準まで戻ってくるとは限らないです。だから、過去の状況は忘れて、今のタイミングで『これからの長期投資に合ったもの』に投資をしていくという風に考えることも大事だと思います。

―年齢の高い方で今から長期投資は難しい場合についても同じように考えればいいですか?

年齢が高い場合であっても、基本的にはその時の損失と関係なく売却の判断をした方がいいと思います。
例えば、次に運用することがないとしても、本当に戻るのかということを視野に入れて考える。売却をしない理由が、損している状況だから持ち続けているということであれば、その持ち続けている期間を別の商品で運用したほうがいいんじゃないかと思います。

―年齢に関係なく、運用自体が良くないものであれば、含み損を抱えて持ち続けるよりも、売却して別のファンドに切り替えることも考える必要があるということですね。

04

リバランスのタイミングとは?

―長期で保有することを考えるリバランスも大事になってくると思うのですが、リバランスのタイミングについて教えてください。

リバランスは市場の動向とは全く関係なく定期的に機械的に行っていくのがいいと思います。例えば、年1回とか半年に1回という風にルールを決めてそのタイミングで、あまり感情や市場の情報をいれないでリバランスをする方がいいんじゃないでしょうか。

―リバランスの方法でおすすめはありますか?

プロっぽくやるんだったら、いろんなルールを決めてそのルールを組み合わせてやるのがいいとは思いますが、個人だったらそこまで厳密にやる必要はないと思います。
例えば、株式と債券を50%ずつ持っていて、55%を超えたらリバランスをするというルールを設けてもいいとは思うんですが、定期的に運用状況を確認する必要がありますし、結構面倒くさい。
それだったら、ある程度期間を決めて定期的にリバランスをする、それまでの間はほったらかしにしておいてOKみたいに、その人が実際に行動しやすいルールを作っておいた方がいいと思います。

05

運用の手じまいをどう考えるか

―年齢が高い方で、運用の手じまいについて悩まれている方も多いと思うのですが、塚本さんの考えをお聞かせください。

例えば、70歳になったから今まで運用していた投信を全部解約して預金にしますというのは、ドラスティックな判断だと思いますし、精神的なところで動いている部分もあるような気がします。それだったら、70歳のタイミングで全部預金になるように60歳くらいから少しずつ売却していくべきだと思います。
そういう意味でも、将来のライフプランニングは大切だと思いますし、ライフプランに合わせて計画的に運用資産の保有比率を下げていくということを考えるほうがいいんじゃないかと思います。今は、皆さん長生きなので、インフレということを考えると、ある程度は運用していたほうがいいんじゃないかと思いますね。

―資産運用を始めた後は、なるべく運用を継続しながら、その上で売却してどう有効に使っていくかまでを考える必要がありますね。

将来的に判断能力が落ちていくということは当然にあると思うので、お子さまがいらっしゃるのであれば、お子さまにも『こういう考えで、こういう金融商品を持っている』というようなことも含めた、相続も踏まえた考え方などの情報共有はした方がいいと思います。親子で共有が難しいようであれば、FPやアドバイザーのような相談できる相手を見つけておくことも大事かもしれないですね。

06

新NISAの活用方法

―最後に、2024年から始まる『新NISA』の活用方法についての考えをお聞かせください。

2024年からスタートする『新NISA』は非課税の枠が増えるので、これまでよりも多く投資金額を増やせる形になりますし、売却しても翌年には生涯投資枠が復活するようになります。
例えば、今年生まれた子供のために、大学進学のための教育資金を運用する場合、まずは親の口座で18年間運用して、大学進学時に運用していたものを大学資金に充当する。その後、子供が社会人になって、今度は自分たちの老後資金に向けて準備していく場合に、空いている生涯投資枠に積み増しするといったような使い方ができるようになります。
これまでは、買って持ち続けなきゃいけないという感じだったのが、買って、必要があれば解約して使って、また余裕資金が出てきたら買ってという形で、柔軟に自分のライフプランに合わせて使っていけるというところがいいと思います。

NISAという言葉が、世の中にすごく普及してきていて、『投資の勉強をしなきゃいけない』という風に考える人が以前よりも増えているんじゃないかと思います。
これまでのNISA制度は、どちらかと言えば『お金持ち人が使うもの』という風に考える人も多かったと思うんですが、『みんな勉強しなきゃいけない』『使わないと損なんじゃないの』という風に変わってきていると思います。

07

まとめ

  • 投資額を増やすタイミングはお金のある時!市場の動きに左右されずに考える
  • 良いアクティブファンドを選ぶことは実は難しい
  • 『長期投資』の考え方に合っているファンドであれば、下がっていても気にしない
  • リバランスは自分ができるルールを決めて、定期的に行うことが大切
  • 運用の手じまいは、運用しながら計画的に使っていくことを考える
  • 自身のライフプランに合わせた柔軟な使い方ができる新NISAを積極的に活用していく
資産運用は長期目線で考えることが大切です。
自分に合った資産運用について相談したい、相談しながらライフプランをふまえた資産運用を検討したい方は、ぜひFDAlcoまでご相談ください。

塚本俊太郎(金融教育家)

1994年、慶応義塾大学総合政策学部卒、97年に米国シラキュース大学大学院国際関係論修士卒業。同年、UBS信託銀行に入行し、債券運用部ファンドマネージャーを務める。02年以降、メリルリンチ・インベストメント・マネジャーズ(現ブラックロック・ジャパン)、ゴールドマン・サックス・アセットマネジメントなど外資系運用会社にて、ストラテジストや投資戦略部長などを歴任。20年に金融庁へ入庁し金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在はフリーランスの金融教育家として金融リテラシーや資産形成について発信・寄稿・講演を行う。

株式会社FDAlco 免許・許認可:金融商品取引業(投資助言・代理業)北陸財務局長(金商)第26号/加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会