賢い投資戦略:長期・積立・分散の効果とは ③『分散』編

INTERVIEW

資産運用のリスクを小さくするための基本である『長期』・『積立』・『分散』について、金融教育家の塚本俊太郎氏に分かりやすく解説いただきました。

インタビューした専門家

金融教育家塚本 俊太郎
つかもと しゅんたろう

01

『分散』とは?

―『分散』をすることのメリットとはどのようなものでしょうか?

やっぱり「卵を1つのカゴに盛るな」という格言が一番分かりやすいと思います。
卵が「お金」でカゴが「金融商品」だとすると、1つのカゴに卵を全部入れちゃうと、カゴを落とした時に全部割れてしまうのと同じで、1つの金融商品にまとめて投資すると、その金融商品がだめになった時には損しちゃいますよね。
でも、例えば、カゴが4つあってそれに卵を一つずつ入れて行くっていうかたちであれば、1つのかごを落として卵が割れちゃったとしても残り3つは安全だよねと。そういう意味で分散するのは重要だと言えます。

02

分散のポイント

―『分散』を考える上でのポイントを教えて下さい。

分散をするメリットは、違う値動きをするものに投資をすることによって資産のトータルの値動きがマイルドになるということです。分散の方法には『資産の分散』と『地域の分散』の2つがあって、1つ目の『資産の分散』は、例えば株式と債券という逆の値動きになるようなものを両方持つことで、トータルでの値動きをマイルドにするというものです。
2つ目の『地域の分散』は、例えば日本の株式だけに投資をすると、日本の景気の影響をダイレクトに受けることになります。でも、全世界の株式であれば、例えばアメリカやヨーロッパ、アジア、新興国などの様々な地域に投資をするができます。そのため、日本の景気が悪化した場合でも、世界全体で見ればその影響はかなり分散されることになり、値動きがマイルドになると言えます。
こういった点から、この『資産の分散』と『地域の分散』の2つが、分散の一番重要なポイントだと言えますね。

03

投資対象としての『新興国』、『REIT』、『金』

―『資産の分散』の資産にも様々な種類がありますよね。投資対象としての新興国やREIT、金について、塚本さんの考えをお聞かせください。

「新興国」や「REIT」、「金」については、値動きが違うものなので、リーマンショックみたいな大きなショックがあるような場合や、例えば戦争が起きるみたいなことだったり、インフレが急激に進行するような時の分散投資の対象としてはいいんだとは思います。
ただ、投資対象のメインは何かってことを考えた時には、やっぱり先進国の株式だったり、先進国の債券というものがメインになると思うので、それらを中心に据えるのがいいですね。

―長期的に資産を成長させていくという基本の運用スタンスを考えた場合、「新興国」や「REIT」、「金」はあくまでスパイスと考えたほうが良さそうですね。

そうですね。
例えば、たまに「金に全て投資してます」という人がいらっしゃるんですけど、 「金」自体は何か価値を生み出してるわけではないので、残念ながら持っていても増えないですよね。インフレとかに合わせて上がったり下がったりという値動きはあるんですけど、何か経済活動にお金使ってもらっているわけじゃないので増えていかない。
やっぱり、世の中の経済活動のメインになってるのは先進国の経済なんです。例えば、株式投資であればお金を払って株式を買い、その買った株式の資金が企業にわたって、工場を作ったり、従業員を雇って新しい商品を作ったりする。そうして、それが売れることで利益が得られる。そういう経済循環にお金を提供することによってお金が増えていくんです。メインの投資対象である先進国の株式や債券に、一部だけ「新興国」や「REIT」、「金」といったある種スパイスとして入れるという考え方が大事かなと思いますね。

04

色々なファンドを持つ必要性

―いろいろなファンドを組み合わせて持っているお客さまとお会いする機会も多いのですが、たくさんの種類のファンドを持つことについてどうお考えですか?

例えば、つみたてNISAの対象になってるような投資信託であれば、基本的に一つの投資信託で充分に分散投資ができているので、複数のファンドを持つ必要はありません。
ただ、例えば「全世界株式とS&P500の投資信託を2つ持っているんだけど」と聞かれた場合、分散としては特にわざわざ2つに分ける必要はないっていうのが一つの答えではあるんですが、逆に2つ持ってて何かマイナスの点はあるかって言うと、特にマイナスの点もないので、自分で全世界とS&P500がいいと思って両方ともに投資したいっていうのであれば、別に問題はないし特に大きなデメリットもないってこともお伝えしています。

05

まとめ

  • 『卵をひとつのカゴに盛るな』が基本!
  • 『資産の分散』と『地域の分散』で価格の変動を抑える
  • 長期で資産形成を考えるなら、メインの投資対象は先進国の株式と債券
  • 『新興国』・『REIT』・『金』は運用のスパイスと考える
資産運用は長期目線で考えることが大切です。
自分に合った資産運用について相談したい、相談しながらライフプランをふまえた資産運用を検討したい方は、
ぜひFDAlcoまでご相談ください。

  • コラムシリーズ「賢い投資戦略:長期・積立・分散の効果とは」
  • ①『長期』編はこちら
  • ②『積立』編はこちら

塚本俊太郎(金融教育家)

20年超外資系運用会社で勤務したのち、2020年に金融庁へ入庁し金融教育担当として高校・大学・社会人向けに授業を行う。高校家庭科での金融経済教育指導教材や小学生向け「うんこお金ドリル」の作成を担当。現在はフリーランスの金融教育家として金融リテラシーや資産形成について発信・寄稿・講演を行う。
Eテレ「趣味どきっ!」に3月1日(水)21:30から4週にわたり「金育」をテーマに出演。
日本金融教育推進協会理事
NewsPicks ProPicker
慶応義塾大学総合政策学部卒業
シラキュース大学大学院国際関係論修士卒業

株式会社FDAlco 免許・許認可:金融商品取引業(投資助言・代理業)北陸財務局長(金商)第26号/加入協会:一般社団法人 日本投資顧問業協会